CASE 1 事例紹介:加速度センサーを用いた行動分類
研究概要
- 目的:
- 手足と腰につけた加速度センサーから、人間がどのような行動をしているのか分類する。
- 行った分析:
- 加速度センサーで取得した重力加速度の時系列データを時間遅れ埋め込みによって3次元空間上にプロット。 プロットして描いた軌跡に対してTDAを適用し、軌跡の図形的特徴を特徴量としてベクトル化。
- 結果:
- 一見似たような時系列データでも、行動の種類によってプロットした軌跡の形状が大きく異なっていることが判明し、TDAでその差異が明確に表れる特徴量を抽出。
実際の分析
STEP 01
ここでは、具体例として右腕のセンサーが観測した加速度データを用いて、TDAの効果を観察してみましょう。
STEP 02
それぞれの行動をとっているときの右腕のセンサーが観測した重力加速度の時系列データ(※)は以下のとおりです。
上図をみると、それぞれのグラフを見比べても動作の違いによる波形の違いはそれほど大きくありません。
※ : Kerem Altun, Billur Barshan, and Orkun Tunçel.:
Comparative study on classifying human activities with miniature inertial and magnetic sensors, Pattern Recognition, 43 (10) 3605--3620 (2010).
https://archive.ics.uci.edu/ml/datasets/daily+and+sports+activities
STEP 03
では、それぞれの時系列のデータを時間遅れ埋め込みによってプロットしてみましょう。
具体的には時系列中の各時刻 *t* に対して、以下の点を3次元にプロットします。
- 時刻*t*の値 → x軸
- 時刻*t* + 1の値 → y軸
- 時刻t + 2の値 → z軸
すると各行動での時系列データは、以下のように図化が可能になります。
描いた軌跡を比較すると、行動の種類によって軌跡の形状が大きく違うことがわかります。
例えば、 エクササイズバイクはきれいな楕円状になっている一方、ランニングマシーンでは輪が大きく歪んでいます。 このように時系列データを時間遅れ埋め込みによってプロットすることで、各行動の違いを図形の形状 の違いとしてよりはっきりと見ることができるのです。 このような図形の形状の違いは、それぞれの時系列データの行動の種類によって生成規則が異なることに起因しています。
以下のグラフは半径の大きさを横軸として、各半径における0次の穴の数の推移を折れ線グラフとしてプロットしたものです。 これを見ると、各行動ごとにグラフは異なる形を描き、軌跡が描く図形の形状の差異がグラフの差異として明確に表れていることがわかります。
TDAを用いて構成したこの特徴量を用いたDeep Learningにより、従来の機械学習手法よりも高精度な行動分類モデルの構築ができるようになりました。
詳細の結果は以下の論文(※)に掲載されています。
※ 参考文献: Time series classification via topological data analysis
Yuhei Umeda: Information and Media Technologies, 32 (2017), 228-239.